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3月の始めに、東京に出かける用事があり、ついでに何カ所かの放射能計測を行ってきた。非常に暖かく、上野の桜通りでは寒桜が満開に、ソメイヨシノのつぼみも色づき、ひとびとの足取りもかろやかであった。また、高層ビルの建ち並ぶ空には飛行船が悠々と舞い、内外の観光客が二重橋や桜田門の見物に次々と訪れていた。

おだやかでなにもなかったような東京だが、福島事故の放射能は確実に東京を浸食しているようだ。自らの手で計測を行うと汚染の構造が少しづつみえてくる。

ガンマ線線量率は大阪と比べてそれほど高くないようにみえる場所でも、放射性セシウム汚染は大阪よりも高く明確になっている。

アルファ線核種、ベータ線核種の濃度がかなり高い地点が存在するのでガンマ線線量率計測だけで安全だと断定すると判断を誤る。アルファ線微粒子、ベータ線微粒子の吸入による健康影響は避けられないだろう。

(平成25年3月12日)

核種分析は1000秒計測で求めた。

日暮里のホテルの室内で計測を行うと、空間線量率は0.035μSv/hと低いが、iFKR254で核種分析を行うと確実に放射性セシウムのピークを検出する(上表16)。これが大阪との違いだ。

iFKR254のセンサー部分をビニール袋で覆って、室内で24時間動いている空気清浄機の後ろのフィルターに突き当てて核種分析を行ってみる。線量率はわずかに0.005μSv/hだけ上昇するが、セシウムに相当するピークが立ち上がってくる。確実さを高めるために3000秒計測して、1000秒相当に換算したのが上表17のデータである。あきらかにエアフィルターに放射能が濃縮されていることがわかる。ホテルのエアフィルターであることから頻繁に清掃されていることだろうし、ホコリもなかった。それでもフィルター部に放射能が濃縮されていることを考えると、人間についているエアフィルターはどうなるのだろう。機器の仕様は確認してこなかったが、1分間に5立方メートルの空気を通過させているとすれば、1日で7200立方メートルの空気をろ過していることになるが、人間では大人で大体1日22立方メートルの空気を肺の中に取り入れてはき出している。1年では8000立方メートルになる。

空気清浄機よりは遅いけれど肺の中に着実に放射能が貯まっていくことを示すものではないか。

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日暮里の谷中周辺、不忍池周辺と東京駅に近い皇居外苑の数カ所で計測を行ったが、いずれも大阪よりはるかに高く、(谷中墓地の1箇所は事故後に土壌撹乱されている可能性がある)セシウムの汚染度は大阪の5倍から10倍の高さである。あくまでも推定であるが、平地の土の上にはiFKR254を用いた地表での計測で2000〜3000countsの放射性セシウムが積もったものとみられる。西新宿保健センター前道路際での計測と現場で採取した土壌濃度の関係から推定すると放射性セシウム1万ベクレル/kgに相当する汚染を継続しているとみられる。

今回の計測で最も汚染度が高かったのが、和田蔵門から直進した場所にある駐車場の隅に溜まった土壌であった。昨年行った西新宿保健センター前のセシウム値の5倍である1万8千countsを示した。(iFKR-ZIPでの計測で、セシウム合計49,900ベクレル/kgであることがわかった。下記参照)

ここは全面アスファルト舗装された広い場所で、事故で降下した放射能が余り薄められずに敷地の隅に集まって来ているためであろう。少しぐらいは車のタイヤについて持ち込まれた土などで薄められているかもしれないが、事故で東京に吹き寄せた放射能粉塵の汚染度の高さを反映しているとみられる。

短寿命核種はすでに失われてしまっているので放射能レベルは下がっているのだが、事故直後は100万ベクレル/kgの濃度に達する高レベルの粉塵が押し寄せていたのだろう。日本政府が放射能の汚染調査をやらなかった時期を埋めた米国の調査は貴重なものとなる。

http://aoitombo.s100.xrea.com/taiki4.html

http://aoitombo.s100.xrea.com/taiki5.html

http://aoitombo.s100.xrea.com/dojou.html

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不忍池そばの道路際で地面にかざすと場所により高い値を示す場所がある。

KC3U0048

KH-LND7317を用いたアルファ線計測の様子。

P1030388

左図は駐車場の土を少しだけ持ち帰って遮蔽体のなかで計測したもの。39gしかないが、西新宿保健センターの200g近いサンプルと同様のピークの立ち上がりを見せている。

I−131のピークが立ち上がっているが、天然の他の核種を誤認識している可能性があるので、 無視してください。

 

シンチレーションサーベイメーターiFKR-254と遮蔽体を用いた計測

今回、最も汚染の高い場所であった駐車場の隅の土壌では、ガンマ線ばかりかベータ線やアルファ線の数値も高い。

ベータ線を出す核種は、放出された放射能核種のデータからセシウムの他にストロンチウムの可能性がある。セシウムより沸点が高いため、比較的飛散しにくいと言われているが、原子炉の中ではセシウムと同量存在すると言われている。水溶性が高いとされているが、アルカリ土金属なので大気中の硫黄酸化物と反応した硫酸塩になれば不溶性になり長くその場に留まる。

KH-LND7317はインスペクター+と同じ4.5cmφのパンケーキ型ガイガー管を用いているので、ベータ線をベクレル換算(http://ax00.web.fc2.com/)してみると、約5300ベクレル/m2に相当する。ベータ線は磁場の中では円弧を描いて飛び、空気の分子とぶつかってエネルギーを失うので1mの高さまで飛び上がってこないとされる。しかし、背の低い幼児やペットなどでは露出した粘膜である眼などに直接的なダメージを与える恐れがある。呼吸などによって肺などに入れば内部被曝をもたらす。体内では10数ミリ飛ぶと言われているが、短い距離の間で組織にダメージを与えてエネルギーを失うことは、ガンマ線よりも組織に対する影響が大きいことを示す。しかも、体内組織が汚染を起こしていても体外からでは検出することができない。

アルファ線のカウント数も高いが、福島事故のアルファ線核種は原子炉の中で生成したり、MOX燃料に使われているプルトニウムと核燃料であるウランである。プルトニウムはチョークの粉粒一つが肺の中に入れば確実に肺がんを起こすと言われている。

比重の大きな元素であるが、微細な粒子は風に乗って飛んでいく。目に見えない微粒子でも粘膜に付着して、アルファ線という放射能を出し続ける。アルファ線はヘリウムの原子核が高速で打ち出されるもので体内組織では40マイクロメートル飛んでエネルギーを失うとされる。重粒子であるのでごく周辺の組織細胞を壊す力は大きい。細胞の大きさは組織によってまちまちであるが、10〜20マイクロメートルくらいであるので、細胞20~30個分くらいのピンホールがあくことから始まるのであろう。

アルファ線濃度だけでは除染基準に達しないかも知れないが、ガンマ線、ベータ線とあわせて、危険性を判断する必要があるだろう。

関八州は空っ風の國だった。

東京から帰って、すぐにこのような記事がでていた。アスファルト舗装に積もった放射能が巻き上げられて人々の上に降り注いでいる可能性が高い。東京でもマスクをつけて生活している人は少なかった。

呼吸器の被曝を避けるためにマスクは必需品だと思うし、風の強い日には花粉症対策用のゴーグル風のめがねなども用意する必要を感じた。

 

 

大阪から出かけると、何を食べたらいいか迷ってしまうし、買い物でもいちいち放射能のことを気にしながら商品を選ばなければならず、非常に緊張した。東京に住んでいる人たちの緊張感がすこしだけ実感できた。

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碧い蜻蛉

  フクシマ・ジェノサイドと呼ばれる全訳)
公害とは、公の共有物たる天地・海川に毒をまき散らし、万物の命を奪う天下の大罪

のどかな春の東京だったが・・・

ホテルのエアクリーナーが

西新宿よりも高濃度の汚染場所が

アルファ線やベータ線が高い場所も

風が吹くと桶屋が・・・

49,900ベクレル/kg!!!

シンメトリックス社で行われたMCA(マルチチャンネルスペクトル解析)についての講習会で、上記和田蔵門の駐車場土壌の濃度計測を行った。小さなZIP袋2つに入れ替えたが、その際に小石を取り除いたため、試料の重量は37gであった。iFKR-ZIPは試料の重量が320gの時に濃度が ベクレル/kgとなるように設定されているので、機器の示す表示値に320/37をかけてやれば試料の濃度が計測できる。

1時間の計測で Cs134 1,536 Bq/kg

 Cs137 4,236 Bq/kg    と表示された。

従って

土壌の濃度は    Cs134 13,284 Bq/kg

 Cs137 36,635 Bq/kg

 

セシウム合計で 49,919 ベクレル/kgとなる。アスファルト上に積もった粉塵が多く含まれていると思われるので1平方メートルあたりの濃度換算はあまり意味がないので行わないが、東京にいかに高濃度の放射能粉塵が来襲したかが推定できる。短寿命核種はこの100倍程度あったのでないか?

2013年6月15日計測