琵琶湖岸に撒かれた放射能チップ |
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現地調査報告 |
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チップや土の放射能スペクトル |
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碧い蜻蛉
電離放射線障害防止規則
(放射線障害防止の基本原則)
第一条 事業者は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならない。
(放射性物質取扱作業室)
第二十二条 事業者は、密封されていない放射性物質を取り扱う作業を行なうときは、専用の作業室を設け、その室内で行なわなければならない。
(焼却炉)
第三十五条 事業者は、放射性物質又は汚染物を焼却するときは、気体がもれるおそれがなく、かつ、灰が飛散するおそれのない構造の焼却炉において行なわなければならない。
(保管廃棄施設)
第三十六条 事業者は、放射性物質又は汚染物を保管廃棄するときは、外部と区画された構造であり、かつ、とびら、ふた等外部に通ずる部分に、かぎその他の閉鎖のための設備又は器具を設けた保管廃棄施設において行なわなければならない。
滋賀県高島は比良山の豊富な水系が生み出した扇状地に位置する環境の豊かな地域であり、有機農業や無農薬栽培に取り組む農家も多く、清涼な伏流水と寒暖差の大きい気候に恵まれてとてもおいしいお米が作られることで有名である。
儒学者の中江藤樹の薫陶もあって、土徳の高い土地柄でもある。
と、思っていたが・・・・
よりによって近畿の水瓶である琵琶湖を選んで放射能チップが撒かれてしまった。
鴨川
チ
ッ
プ
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撒
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た
道
路
フレコン
滋賀の河川敷に放射能汚染の木材チップ 東京の会社放置
琵琶湖に注ぐ滋賀県高島市の鴨川河川敷に、東京電力福島第一原発事故で放射性セシウムに汚染されたとみられる木材チップが、大量に放置されていることがわかった。県は、関与したコンサルティング会社=東京都千代田区=に原状回復を指示したが、同社の男性社長と連絡が取れず、河川法違反(形状変更)や廃棄物処理法違反容疑での刑事告発も検討している。
県によると今年4月末、河川管理用の無舗装路に、木材チップが長さ約570メートル、厚さ約20~30センチにわたって敷き詰められているのが見つかった。河口付近でもチップが土嚢(どのう)77袋に詰められ、放置されていた。(朝日新聞デジタルより引用,2013年10月7日)
いきさつについて、講談社『FRIDAY』10月18日号]の記事が紹介されていたので転用する。
「10tトラックが来たのは、春頃かな。てっきり木材チップで、デコボコ道路をならしているのかと思っていた。近所を散歩している人が県に通報したらしい。」(近隣住民)
滋賀県が調べたところ、投棄作業をしたのは、東京の「ホームサーバー企画」という会社だった。同社社長で元郵政省(現総務省)キャリア官僚の田中良拓氏が、3月15日に河川敷入口の門の扉の鍵を借り受けていることが確認された。
この事態を受けて、県では投棄した運送業者に連日電話したが、不通。仕事を委託したホームサーバー企画の田中社長の電話も不通で、書類で送付した原状回復措置も「受取人不在」だった。
県によると、木材チップは福島県本宮市のHという製材業者からでたものだった。原発周辺の樹木は、表皮に大量の放射性物質が付着している。この業者は、表皮を剥ぎ、線量を下げる作業を東電から受注していた。
本来なら、放射性物質が付着した木材は国の許可した最終処分業者によって処分されるはずだが、どういうわけか琵琶湖畔に放置されていた。
「滋賀の件については、田中さんから事情は聞きました。あくまでも田中さんのもとで合法的に処理されていますんで。今朝も電話が来て一切コメントを出さないでくれと言われています。」(H製材社長)
実はH製材は2012年12月、田中社長と事務代行契約を結び、東電との交渉を任せていた。関係者によると、同社は約9000tの樹木を処理し、1tあたり5万3000円を東電から受け取ることになっていたという。合計4億7700万ものカネが支払われたことになる。
「田中社長は東電内にいる東大時代の同級生からH製材の話を聞き、契約を結んだんです。H製材の社長は田中社長の経歴を聞いて、すっかり信用した。」(東電関係者)関係者によると、福島から出た木材は鹿児島の堆肥製造会社にも運ばれた。既に堆肥として流通している可能性が高いという。」
現況把握のために現地調査に出かけた。地図にあるように鴨川左岸の幅約4mの管理用道路に数百メートルに亘って木材チップが撒かれたのだが、現在は県によってブルーシートが延々とかけられていた。あつく敷き詰められたチップは業者の車両によって堅く踏みしかれて、道路にへばりついていた。中には木片が混ざっているがほとんどは樹皮である。
立入禁止で門扉が閉じられ、普段散策のひとが通り抜けていた脇にもロープがかけられていたので、中に入ることを断念して計測器だけを門扉内に差し入れてブルーシートで覆われたチップの放射能計測を行うことにした。今回の汚染は局所的であるので空間線量を計測しても意味が無いため、地表部の計測のみを行った。門扉の外にもチップはこぼれ出ているため、そこでも計測、こぼれたチップをサンプリング。計測した場所の下の土混じりチップも持ち帰って濃度計測を行うことにした。また、入口から少し手前の汚染を起こしていないと思われる鴨川の法面でもシンチレーションサーベイメータでの計測を行った。
機器は、核種のスペクトルがとれるシンメトリックス社のiFKR-254、インスペクター+と同じ45mmサイズのパンケーキ型ガイガー管を備えたシーディーコーポレーションのKH-LND7317を使用した。
中の方がどのような状況になっているかが入口からではわからないので河口部に向かうことにした。横江浜の海岸の公園に車を置き、渚をたどって河口部に向かう。湖といっても波が立っているので、波をさけながら、岸から垂れ下がる笹や野茨に悩まされ、蜘蛛の巣を払いながら波打ち際を進んでようやく奥の方の道路にたどり着いた。入口から400mぐらいでないかと思われる場所であるが、びっしりとブルーシートで覆われている。少し下流には放置されたままのフレコン(フレキシブルコンテナバッグ)が並べられている。フレコンの場所まではブルーシート上を歩いて行かねばならないので、断念し、その場のシート上で計測を行った。
横江浜の公園に戻り、そこでバックグランド把握のための計測を行った。
右側のロープの隙間から機器をシート上に載せて計測
門扉の手前で計測
チップが踏まれて固着していた
右側のロープの隙間から機器をシート上に載せて計測したチャート。関西ではこれほど明確なセシウムのピークにおめにかかることはなかった。
湖岸からアクセスした奥の方のブルーシート上のチャート。線量率はそれほど上がっていないようでも、明確なセシウムのピークになっている。二、三千Bq/kgレベルか?
今回の計測で高い値を示したのは、門扉内のシート上での計測1で、0.161μSv/hとバックグランドレベル(地表で0.06μSv/hくらい)より0.1μSv/h高いだけだが、1000秒計測でのCs合計カウント数が約1万カウントと土壌を計測したら万Bqオーダーに相当する汚染を示していた。門扉の手前の路上でも4000カウントとこれも高い汚染を示している。採取した土をiFKR-ZIPで計測したところ、4030ベクレル/kgであった。これは1㎡に換算すると269,000ベクレル/m2になる。散布道路の長さを450mとすると、少なくとも47億ベクレルの放射性セシウムが積まれて可能性があることになる。成人で全身に1000ベクレルも入ると心筋梗塞などを起こして死亡する可能性があるということだから、47万人にそうした傷害を与える可能性のある毒が近畿の水源におかれたことになる。
ベータ線は計測2が最も高かったが、厚手のブルーシートの遮蔽効果が有るのかもしれない。バックグランドの横江浜のベータ線が高いのは、花崗岩が風化してできた砂地のためであろう。
ブルーシートは比較的新しく引かれたもののようで、下では車にひかれてチップが轍をつくっている。チップの厚さは20〜30cmくらいということで、これまでも大雨などにさらされてきただろうが、すでに水溶性の放射能が地下浸透を起こしていることが疑われる。特にこの地域一帯が砂地であることから数十センチ下まで放射能が達している恐れがある。
門扉のところで採取したチップの
放射能スペクトル
バックグランドとの差からセシウム濃度を求めたもの。感度の低いiFKR-254で計測してもこれだけのピークになる。チップ重量25.6g。計測時間2時間。機器換算計数25
設定重量81g
Csall=60.3×25×81÷25.6=4770
採取したチップサンプルの放射性セシウム濃度
4770Bq/ kg
※ iFKR-254を簡易遮蔽体に入れ、さらに、遮蔽を強化して、5cm以上の厚さの鉛で被覆して計測したもの。計測ソフトはiFKR-ZIPのものを使用している。
門扉のところで採取した土混じりチップの
放射能スペクトル
バックグランドとの差からセシウム濃度を求めたもの。試料重量193g。計測時間1時間。
機器設定重量320g
Csall=2430×320÷193=4029
採取した門扉前の土混じりチップサンプルの放射性セシウム濃度
4029Bq/ kg
iFKR−254 での 計測
iFKR−ZIP での 計測