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市民放射能測定所三題 秋田/宮城/石川

秋田は直撃を免れたか

石川県の干しエビ 25.5Bq/kg

宮城県の畑土   見ないふりのはざまで

碧い蜻蛉

  フクシマ・ジェノサイドと呼ばれる全訳)
後世に
公害とは、公の共有物たる天地・海川に毒をまき散らし、万物の命を奪う天下の大罪

秋田県横手市の農家の方が、自ら生産する農産物の安全性を確認するために放射能測定を始めた。作物だけでなく、耕作している畑の土についても測定し報告されている。比較的汚染度の低い地域ではもともとの土壌に含まれるウラン系列やトリウム系列のピークが観測され、今回の事故で放出されたセシウムなどの核種の位置と重なるため、事故に由来する汚染をなかなか確定できない。(高額でランニングコストの高いゲルマニウム半導体検出器ならともかく、市民測定所の多くが所有するNaIやCsIのシンチレーション計測器では大きな課題となっている)

この農家の方は、同一箇所の地表部(0〜5cm)と地下50cmの部分の2サンプルの土を採取してそれぞれ放射能を測定していた。計測器はシンメトリックス社のiFKR−ZIPでそれぞれ10時間計測して、やはり10時間計測したバックグランドスペクトルと比較して濃度を求めていた。

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地下50cmの部分の土の計測スペクトルからバックグランドスペクトルを引いた差分のスペクトル

図で300ch付近のピークがCs137と認識したもの、400ch付近がCs134。137のピークの山は290ch付近にあり、本来のCs137の山330chより左にずれている。Cs134についても396ch付近には山が見られす誤検出と考えられる。

この場合は、土壌の持つ天然核種を誤検出していると判断した。

もし、放射性セシウムが存在しても1Bq/kgレベルでないだろうか。

地表0〜5cmの部分の土の計測スペクトルからバックグランドスペクトルを引いた差分のスペクトル

こちらのスペクトルではCs137の330ch、134の395chに山が見られ、明らかに福島事故由来の放射能を確認できた。

しかし、定量と言うことになると、137に天然核種由来のピークが重なっているので定量は難しい。

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地下部のセシウム汚染が低いことから、地表部土壌の計測のバックグランドとして地下部の土壌の計測スペクトルを用いて差分グラフを描かせた。左図の赤いグラフが地表部のスペクトル、黄土色が地下部のスペクトル、緑色が差分のスペクトル(縮尺を拡大して表示している)になる。地表部分にも地下部分にも共通に存在する天然核種の影響が相殺されて、人為的な汚染の影響が浮かび上がった。

Cs137とCs134のつくるピークが明瞭で、Cs全体で22.8Bq/kgの値となった。Cs134の数値から、福島事故でのCs137の濃度は6Bq/kg程度と推定すれば、核実験やチェルノブイリ事故の残存セシウム137は15,6Bq/kgあることになる。

このデータから横手市のこの畑に降った福島事故の放射能はチェルノブイリ事故などの残存放射能レベル程度であり、激しい直撃は避けられたことになるのでないか

Cs137

Cs134

福島原発事故で海洋に降下した放射能は全放出量の8割だとされている。各機関による推計は様々であるが、3京ベクレルにも達する史上最悪の放射能の海洋への投入である上に、現在でも毎日600億ベクレルが海洋に投棄されている。毎日毎日大事故を繰り返していることになる。

収束不能、いずれ海洋魚はすべて毒化することは避けられないであろう。

だがしかし、まだ日本海側は大丈夫だろうと市販されている石川県産の干しエビを購入した。輪島の業者であり、原料にも石川県産と書かれている。福島沖で採れた魚を北海道や長崎に持って行って水揚げするということは聞いていたが、高い燃料代を払って石川までは持ってこないだろうと考えて購入した。この夏のことである。

それでも念のためにと、高槻・市民放射能測定所に持ち込んでiFKR−ZIPで計測してみた。

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試料を破砕してもかさばるため全量69gのサンプルで2時間計測、表示値はセシウム全体で5.5Bq/kg。ZIPはサンプル量320gで標準化されているため 320/69を乗じて、放射性セシウム濃度は25.5Bq/kgであった。

「まさか」という結果になった。

生のものであれば3〜4Bq/kg相当であり、日本海側の表示がされている海産物も安心できないことになる。

放射能による食の崩壊は西日本でも同時に進行している。むしろ西日本の人たちには危機感がないだけに影響は大きく現れる恐れがある。

高槻・市民放射能測定所に、福島原発から100kmの宮城県のある市から大阪へ母子避難をされてきた人から、親が今でも作物を育てて食べている実家の畑の土の放射能を計測してほしいと依頼があった。宮城県は知事の号令のもとに放射能の降下量の測定や県内各地の汚染実態の把握を怠ってきた。無機材料分野では世界に冠たる技術を有する東北大学すらも放射能への不安におびえる人々に応えるという人としての、学者としての使命すら失っているので、十分な調査が行われず実態把握の空白域となっている。

だが、調査データがないと言うことは汚染が無いと言うことではない。

2011年6月に1歳の赤ちゃんと大阪へ母子避難という選択をされた依頼者は逃げて安心して子育てができるという思いの反面、「だいじょうぶだよ」と言いながら畑を耕している親との間で引き裂かれる毎日がある。

 

見ないふり:悪事や失敗などを認識しておきながら、特にそれに対処するための行動を起こさないこと

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Cs134

Cs137

Cs134

宮城県なら天然核種の影響など吹っ飛んでしまうほど汚染が見られるであろうと推測していたが、試料量320g、30分でセシウム3兄弟の明確なピークが立ち上がった。

Cs137 156Bq/kg

Cs134 72Bq/kg

Cs合計 228Bq/kgであった。

耕作土壌であるので65倍して1㎡あたりの濃度にすると、14,820Bq/m2

東京都ほどひどい値ではなかったが、ずいぶんな汚染である。生まれたばかりの子どもが泥まみれになって遊べる環境ではないと思う。野菜なども子どもに食べさせるわけにはいかないだろう。

依頼者に手記をお願いした。

コメントは、なんと書けばいいのか…。思いを言葉にするのは、難しいですね。

 同じ市内から、牛のエサになるはずだった、干し草から、放射線(セシウム)の基準値超えた事のニュースが流れた事がきっかけで、当時、1歳9ヶ月になる息子と共に大阪に母子避難してきました。現在、4才。それまでは、自宅の露地栽培の野菜を思う存分、食べられた生活が一変しました。子供も歩けるようになり、外への興味も増え、外遊びがしたくなる時期。ですが、放射性物質の呼気により取り入れての内部被爆が気になり、外遊びをさせたくないと思う気持ち。

 当時、息子を入れていた保育園でも給食の食材についての話し合いを持ちましたが、『国が安全と言っているので地産地消を推進します』との返答。

 政府は、健康被害は直ちには出ない。との発表。??原発は、安全と言って来たのに、納得出来ない発言。直ぐには、被害は出ないけど、何年後かには出るって事だよね〓との、矛盾。

 色々、避難することに対して、家族との口論にもなり、子供を将来起こるであろう健康被害のリスクから避けたい私の親としての責任感など、それまであった、私のコミュニティ、仕事全てを捨てて、避難することを決断したと言う、経緯があります。

 

 避難出来たことにより、放射性物質から、逃れられたと言う精神的な安定は、得られましたが、30代になっているはずが、不馴れな大阪の土地での右も左もわからない時期もありました。

 

 生活していくにつれ、故郷にいる家族の事も気になり、後、2年後に小学校の入学も控えている事から、前から、気になっていた宮城の実家の土の汚染状況を検査するに至りました。

 

 危険な所だろうという認識はあったものの、今回の検査で、もしかしたら、不検出であって欲しいとの希望もありました。

 

 が…、セシウム検出されました。

 

 やっぱり帰れないなーというがっかりの気持ち、とやっぱり避難して来た事は間違いなかったんだという二つの気持ちがぐるぐると頭の中を駆け巡りました。

 

 

 大阪でも子供の保育園確約しているという理由から、大阪市内に避難して来ましたが、住居様式や、緑が少ない等、更には、人生設計が崩れ、先の将来が見えなくなってしまいました。

 

 考えても答えは出ないので、余り深く考えてはダメだと感じたりしています。

 

 じっくりとあせらずに、自分が納得出来る未来を作りあげたいと思っています。

 子供には安心出来る自然の環境でのびのびと遊ばせてあげたいです。

 

 どんな状況になってもたくましく生きていける人になって欲しいと望みます。

 

 ありがとうございました。