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碧い蜻蛉

  フクシマ・ジェノサイドと呼ばれる全訳)
公害とは、公の共有物たる天地・海川に毒をまき散らし、万物の命を奪う天下の大罪

分子生化学者は声を大にしてほしい

放射線による毒作用(オータコイド仮説)

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 20年以上も前に読んだ古い知識だが、土井邦雄氏の「毒性学ー毒性発言のメカニズム−」(1993,川島書店)から引用したい。図8.1、8.2、8.3は同書から引用した。

 「毒性の表現型は、毒性の発現部位である臓器・組織によってそれぞれ特徴を示す。しかし、生体の形態および機能の最小単位である細胞で観察される事象や細胞障害のメカニズムについては、臓器・組織の枠を越えて共通する点が多い」

 「細胞は細胞膜によって外界と境界されており、内部を細胞質と呼ぶ。細胞質にはコロイドとしての細胞質基質に浮かぶような形で、核や種々の細胞内小器官が存在している。

 「細胞膜は脂質分子がその親水基を内外両方面に向け、また、疎水基同士が向き合った形で二重層を形成し、その間に多糖体の分子鎖をつけた糖タンパク粒子が組み込まれている。こうした細胞膜の基本構造は、核膜や種々の細胞内膜系とも共通している。」

 「細胞膜内の糖タンパク粒子は膜内を流動しながら、外界からの情報を分子の形で細胞内に伝える受容体として機能している。また、Na、KおよびCaなどの出入りには、細胞内に構築されたチャンネルが機能しており、細胞膜の透過性を制御し、細胞容積を維持している。」

 8・2・2 細胞傷害の進展過程

 「細胞に過剰な生理的ストレスや病的刺激が加わった場合、細胞は正常とは異なった恒常状態に移行して適応する。ところが傷害刺激が適応能を越えている場合や、本来適応能を欠如している細胞では可逆性傷害(註:回復可能な傷害}を受ける。この段階で傷害刺激が排除された場合には、細胞は正常状態に復帰する。しかし、最初から高度の刺激が加わった場合や刺激が長時間続いた場合には、細胞は”可逆点(point of return)”を越え、非可逆的傷害(註:回復不能な傷害)を受けることになり、細胞死に至る。」

 「可逆的細胞傷害の最大の特徴は、細胞内水分の増加による細胞の腫大である。同様な変化は細胞内膜系であるミトコンドリアや小胞体でも目立つ。こうした変化は、細胞膜レベルでの細胞容積制御機能の障害によるもので、膜自体の透過性の増加やナトリウム/カリウムポンプの直接的あるいはATP供給低下(註:エネルギー供給の低下)に二次的な阻害が原因となっている。可溶性細胞膜傷害では、このほか、粗面小胞体膜からのリボゾームの解離や核のクロマチンの凝集が観察される。

 非可逆的細胞傷害の段階に至った細胞では膜系の損傷が顕著で、細胞外から細胞質基質への、また、ミトコンドリア内から細胞質基質への、カルシウムイオンの流入が増加する。また、膜の破壊によるライソゾーム酵素の細胞期室内流入で自己消化が起こる。ミトコンドリアでは高度の空胞化や基質の電子密度の増加がみられ、小胞体は溶解し、核では核濃縮、核融解、あるいは核崩壊が観察される。」

 8・2・3・2 フリーラジカル

 「直接的な細胞傷害のメカニズムとして重要なのが、活性酸素種をはじめとするフリーラジカルによる生体膜傷害に基づくものである。フリーラジカルは外殻に不対電子を持つ分子あるいは原子で、電子の付加や消失、あるいは共有結合の等方性分解によって生ずる。細胞内では放射エネルギーの吸収、正常な代謝過程および内因性の酸化反応や外来性化学物質の代謝によって活性酸素種が形成される。こうして生成されたフリーラジカルは自己触媒性反応を開始し、傷害の連鎖反応が拡大して行く。」

 「フリーラジカルは脂質過酸化により細胞の膜系を障害するほか、酵素などのタンパクのSH基に作用してS−S結合を起こし、そのタンパクの機能を障害する。また、DNAも障害する。さらに過酸化の最終産物(脂質アルコール、脂質アルデヒド、マロンアルデヒド)のなかには毒性を有するものもあり、それらが生成部位から離れた部位に傷害を起こすことも考えられる。

 細胞の膜系の脂質過酸化は、膜のリン脂質の不飽和脂肪酸からのHの切り出しで始まり、ついで、生成された脂質ラジカルが分子状酸素と反応して脂質過酸化ラジカルを生成する。この脂質過酸化ラジカルは非常に反応性に富み、近隣の正常な脂質からHを切り出し、次々に反応が拡大して行く。」

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 アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線は電離放射線と言われ、高いエネルギーを持つために原子や分子から電子を引きはがしたり、分子の結合を引きちぎる。そして、イオン化した原子や分子、フリーラジカルが生成する。引用にあるようにフリーラジカルの形成が放射線の毒作用の重要な一面である。

  H−O−H    →   H・   +    ・OH

         放射線

 放射線がDNAに直接照射して、DNAを損傷したり、改変したりして、DNAの働きを損なうばかりでなく、フリーラジカル形成から一連の細胞傷害をきたすことがわかる。

 こうした放射線による直接的な細胞傷害は、再生されない脳神経細胞や心筋細胞などで起これば致命的な結果をもたらす可能性がある。また、再生の活発な細胞でDNA損傷が起きればこれも重篤な結果が予想できる。

 この土井さんのメカニズムに加えて、放射線損傷を受けた細胞が産生する生理活性物質による一種のホルモン様毒性を考えなければならないと考える。

オータコイド仮説

細胞図は生物図説 秀文堂より改変

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 ある人が放射線により過酸化物ができ、それによって誘導された化学物質で毒作用が起きるということを記述していたので調べていて、プロスタグランジンのあるものが出血や痛み、血栓など関東で起きている事象と同じような症状を起こすことを知った。

 また、バイスタンダー効果と言って放射線の当たった細胞の周囲にあるあたらなかった細胞にも影響が出ることが示されている。

 これらの現象をうまく説明できるものとして、放射線を受けて傷害を負った細胞から出される生理活性物質(オータコイド)によるのでないかと考えた。

 これも古い本による古びた知識でしかないが、「情報の伝達と物質の動きⅠ(岩波講座−分子生物科学5,1993)を参考にしながら考えてみたい。

 生物や医学の領域は物理屋の考えるような単純なものでなく、エネルギー的には微々たる一分子が雪崩のような現象を起こすことも多い。

ホルモン・神経伝達物質・オータコイド

 私たちの体の中にはさまざまな生理活性物質が存在する。生理活性物質は、情報である。なんらかのはたらきをするような情報をもって移動し、標的の細胞の受信機に情報を伝えると標的細胞が指令に従って動き出すのである。

 多くの人たちが知っているのがホルモンだろう。男性ホルモン、女性ホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、黄体ホルモン・・・ 。ホルモンは特定の産生臓器でつくられて血流に乗り体内を長距離移動し、標的臓器にたどり着いて作用を発揮する。標的となる臓器には標的細胞があり、細胞膜の表面に受容器を備えている。鍵と鍵穴のようにホルモンが受容器にはまり込むことから標的臓器の反応が開始される。

 これに対して、神経細胞から神経細胞へと情報伝達する神経伝達物質は、シナプスと呼ばれる接合部位の間だけを移動し、情報を伝達するとただちに分解される。余談になるがこの神経伝達物質と似た構造を持つ有機リン系の農薬はシナプスの受容器にとりついて神経細胞を興奮させるが、簡単に分解されないために神経の興奮状態がおさまらずにけいれん発作を起こし続ける。本来の神経伝達物質は情報伝達すれば一瞬で消されて、次の情報伝達を待つ体制がとられる。短寿命な存在である。

 生体内には、ホルモンにも神経伝達物質にも属さない生理活性物質がたくさんある。細胞の機能を調節するプロスタグランジンたロイコトリエン、血小板活性因子、ロイコトキシンなどのエイコサノイド、免疫や神経内分泌系を調節するインターロイキンやインターフェロン、腫瘍壊死因子、リンホトキシンなどのサイトカイン、細胞成長因子、ヒスタミンなど多くのものがある。これらのものはある特定の細胞が必要に応じて産生・分泌するものであり、その作用範囲も産生細胞の周辺に限局され、再生細胞自身にもその効果が及ぶと考えられる。そのため、これらの物質(数百以上あるとみられている)に対して”自分自身を調節する物質”という意味のオータコイドの名称が付けられた。

 一般的にオータコイドは生体内で、生理的もしくは病的状態において、ごく微量pM(ピコモル)〜nM(ナノモル)のオーダーで生成され、きわめて強力な生物作用を示す。オータコイドのうち、血管の平滑筋に作用するものは、それを薬物として大量に用いた場合にはその薬理作用は全身に及ぶ。わずか1μgの血小板活性因子(PAF)をウサギに静脈注射するだけで死に至らしめる。

 こうした強力な生理活性を持つ物質だけに、生体は産生を局所に限ったり、血中に長く留まらないような防御機能を備えている。

 

エイコサノイド:エイコサン酸(アラキドン酸)を骨格に持つ化合物ないしその誘導体の総称。エイコサノイドにはプロスタグランジン、ロイコトリエンやトロンボキサンなどが含まれるが、細胞によってどれがどの程度発現するかは異なる。

サイトカイン:働きは、免疫、炎症に関係したものが多く知られるが、細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒など 作用は多様(多面的生物活性)であり、 異構造のサイトカインでも共通活性を示すことがある(重複性作用)。 さまざまな細胞内シグナル伝達経路をへて、細胞のDNAやRNA変異やタンパク質合成のパターンを変化させ、細胞の働きを変える

アラキドン酸カスケード

 オータコイドの中のアラキドン酸という脂肪酸を起源とするプロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などのエイコノサイド群はどのようにして産生されるか。

 細胞がいろいろな刺激を受けると、酵素が活性化され、アラキドン酸など細胞膜に結合している脂肪酸を細胞内へ溶出させる。この刺激は物理的なものでも化学的なものでも良い。細胞周辺の酸素濃度、pH,血圧の変化、圧刺激、ホルモン、オータコイド、神経刺激、薬物など何でも良い。これらの変化が細胞膜を刺激するとただちにアラキドン酸が遊離する。

 このアラキドン酸を原料として、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどがつくり出され、細胞外へ放出される。低線量とは言え、放射線刺激にたえずさらされる細胞は、膜自体が放射線にたたかれるし、細胞基質で生成した過酸化物が膜を攻撃してオータコイド産生のきっかけともなっていよう。

どのようにオータコイドがつくられるのか?

岩波講座−分子生物科学5,1993

岩波講座−分子生物科学5,1993

オータコイドの働き

(1)ヒスタミン

 

ヒスタミン:ヒスタミンはヒスチジンが脱炭酸されたもので、組織の肥満細胞と血液中の好塩基性白血球に存在す

   

る。肥満細胞から遊離し、ヒスタミン受容体を介して作用を起こす。

  H1受容体を介した作用: 血管拡張(内皮細胞からNOやPGI2遊離)

 

血管透過性の亢進、気管支平滑筋の収縮、

 

知覚神経終末からの痛みと痒み、副腎皮質からのカテコラミン遊離
 


  H2受容体を介した作用: 胃酸分泌促進(cAMP濃度上昇によるプロトンポンプ活性化)

 

頻脈(心収縮力増強、心拍数増加)

 

免疫抑制(リンパ球のIL-2産生を阻害)

 

(2)セロトニン
 

セロトニン:胃腸管粘膜のクロム親和性細胞で生成され、血中の血小板で全身に運搬される。精神機能を調節して

 

おり、精神病、幻覚の発現に関与している。松果体において、メラトニンを形成し、日内リズムに関

 

与。中枢興奮作用を示し、間代性けいれん、体温上昇、首振り運動などを起こす。

 5-HT1受容体を介した作用:交感神経終末からのNE遊離抑制による骨格筋や平滑筋の収縮
 

 

5-HT2受容体を介した作用:平滑筋に直接作用して、平滑筋弛緩

 

腎、肺、子宮、胎盤、臍帯の血管に直接作用して、血管収縮

 


5-HT3受容体を介した作用:腸神経節の刺激によるACh遊離を介した平滑筋収縮作用。

 

 

(3)アンジオテンシンとブラジキニン

アンジオテンシン:レニンによって、アンジオテンシノーゲンがアンジオテンシンⅠに変換され、

 

それがACEによってアンジオテンシンⅡに変換され、これは昇圧作用を持つ。

ブラジキニン・カリジン:組織障害、細菌感染などでキニノーゲンがカリクレインによって変換され
 

高分子キニノーゲンはブラジキニンに、低分子キニノーゲンはカリジンになる。

 

発痛、発炎症物質。呼吸器で気管支収縮、炎症亢進で気管支喘息を悪化させる。

 

血管拡張作用をしめし、降圧作用。

タキキニン:平滑筋をすばやく収縮させ、また血圧下降作用を持つペプチド類

 

サブスタンスP、ニューロキニンA,Bなど

エンドセリン:血管内皮が産生するペプチドで、強力かつきわめて持続的な血管収縮物質。

 

 

(4)エイコサノイド

 

エイコサノイド:炭素数20以下の不飽和脂肪酸から作られるプロスタグランジン、トロンボキサン、

 

ロイコトリエンなどの、生理活性物質。



PGI2:血小板凝集阻害、血管拡張、胃粘膜保護

 

PGE2:血管拡張、胃酸分泌抑制、胃粘膜保護、子宮収縮
 

PGF2α:血管収縮、子宮収縮、気管支収縮
 

TXA2:血小板凝集、血管収縮
 

LTE4:血管透過性亢進、血管収縮、気管支収縮

 

http://www.geocities.co.jp/Athlete-Athene/5362/o-ta.html

流産、下血、鼻血、原因不明の痛み、頻脈、血栓、炎症など、放射能と無縁だと否定されているが、内部被曝、外部被曝によって、体のあちこちでこれらのオータコイドが産生されて、生理作用を起こすとしたら、福島、関東に起きているさまざまな健康被害は無理からぬことになるのでないだろうか。

2013年8月

紫外線によるDNA傷害

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放射線よりはるかにエネルギーは低いが、紫外線によってもDNA損傷が起きる。やはり、化学結合を分断するエネルギーが加えられることによる分子の変換や、フリーラジカルの生成や増感反応による活性酸素の生成による傷害である。紫外線はエネルギーが低く、組織透過力が少ないのでおもに皮膚の傷害が問題とされるが、ガンマ線は人体をやすやすと通り抜けていく。紫外線で起きている皮膚などの傷害をガンマ線では体の深部でも起こす。

光子エネルギーの吸収によるダイレクトなDNA鎖の切断・傷害と言うことも考えられるが、DNAによる光の吸収が起きていない長波長の紫外線によってもDNA傷害が起きていることから、多くが紫外線によって生成したフリーラジカルや活性酸素による間接的な作用と考えられている。紫外線吸収によって生成する活性酸素には、スーパーオキシドアニオン(02)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(・OH)、一重項酸素(1O2)などがある。これらの活性酸素は、タンパク質の切断、脂質の過酸化、DNA塩基の酸化などをもたらし、DNAにさまざまな傷害をもたらす。

DNAの二本鎖の間を結合させることもある。重度のDNA損傷は細胞死にいたる。軽度のDNA傷害は誤りを保存したまま増殖しガンなどの発生や遺伝傷害などにつながっていく。

こうした紫外線によって引き起こされるDNA傷害と同様の傷害がガンマ線照射においてはもっと激しく引き起こされると見た方が良いだろう。

(参考 中川紀子、原核生物の紫外線傷害と修復、生物の光傷害とその防御機構p17−35)

出典:生物の光傷害とその防御機構p23

紫外線による免疫抑制

地球をとりまくオゾン層の薄くなるオゾンホールが皮膚ガンの増加をもたらしているのでないかと大きな問題になったが、紫外線には発がん作用があることが知られている。最近では、紫外線によって免疫抑制が起こされてガンの増殖が促進されることがあきらかになって来ている。

皮膚細胞に紫外線を照射すると腫瘍壊死因子や腫瘍増殖因子、メラニン産生刺激因子などのサイトカイン、インターロイキン、プロスタグランジンなどの免疫抑制にかかわる生理活性物質がつくられる。

T-リンパ球の減少、ナチュラルキラー細胞の減少、紫外線照射の強弱によるアレルギー物質であるヒスタミン産生の増進と抑制、全身の免疫抑制などが挙げられている。

特に、全身の免疫抑制に対しては、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子α、プロスタグランジンなどの関与が指摘されている。こうした生理活性物質オータコイド類の産生は放射線による細胞損傷でも起きていることから、放射線管理区域相当の汚染をしている東京周辺、チェルノブイリの強制避難区域である福島県でも放射線による免疫抑制による傷害が顕在化し始めているのでないか。

そのほか、紫外線による皮膚の老化、紫外線による白内障の促進などが明らかにされているように、放射線による老化の促進、白内障の増加なども同様の機構で説明できる。

このまま子どもたちを放射線汚染地域のまっただなかに放置して良いはずがない。

自らを問わない知識などは学問とは言えない。一人でも多く、現状の放射能汚染の意味を明らかにしてほしい。ペーパーを書き、有名になることが学問の意味ではなかっただろう。得た知識を一人でも傷害や病気から救うために役立ててほしい。一人で生きること、正岡子規は「学問のさびしさに堪え、炭をつぐ」と詠んでいる。

 

それとも、60年代の大学闘争以降、大学には学問が無くなったのであろうか。

放射線、特にガンマ線によるさまざまな傷害のメカニズムについて、X線やガンマ線よりもエネルギーが低く長波長ではあるが同じ電磁波である紫外線による傷害のメカニズムと関連づけて考えることができる。

2013年8月11日UP

http://bsd.neuroinf.jp/wiki/プロスタグランジン 最終更新 2013年7月5日 (金) 15:54 (UTC+9:00)

北岡 志保、古屋敷 智之
京都大学 大学院医学研究科 医学専攻 医学研究科 医学専攻

原稿受付日:2012年8月13日 原稿完成日:2012年11月2日

プロスタグランジンは五員環構造を含む20個の炭素鎖からなる生理活性脂質である[1]。プロスタグランジンと構造の類似したトロンボキサンを併せてプロスタノイド(prostanoid)と称する。1930年にヒトの精液に含まれる子宮収縮物質として発見された。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用は、主にプロスタノイドの合成阻害によると考えられている[2]。生体には五員環構造の側鎖や炭素鎖の二重結合の数の異なる多種のプロスタノイドが存在するが、これまでの研究では主にプロスタグランジンD2 (PGD2)、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF2α(PGF2α)、 プロスタサイクリン(プロスタグランジンI2、PGI2)、トロンボキサンA2(TXA2)の役割が解析されてきた。PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、TXA2はDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる特異的なGタンパク質共役型受容体を介して、多様な生理機能、病態生理機能に関わる[3]。これらの機能には、循環器・消化器・骨の恒常性維持、卵巣や子宮といった生殖器の機能、局所炎症に伴う血管透過性亢進や疼痛惹起、細胞性免疫応答、睡眠、疾病時の発熱や内分泌応答、神経変性疾患や脳虚血に伴う神経細胞死、脳機能的充血、シナプス可塑性や記憶学習、心理ストレス下での情動制御などが含まれる。

目次 

1 プロスタグランジン生合成

2 プロスタグランジン受容体

3 脳機能におけるプロスタグランジンの役割

3.1 疾病応答

感染や組織損傷は局所炎症に留まらず、発熱、視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamus-pituitary-adrenal axis; HPA)活性化、食欲不振、疲労、傾眠、痛覚過敏といった全身症状を呈する[16]。

3.2 発熱

視床下部視索前野へのNSAIDやPGE2の局所注入実験により、視索前野におけるPGE2産生が疾病応答モデルによる発熱に寄与することが示唆されてきた[17]。

3.3 HPA系活性化

視床下部の室傍核(paraventricular hypothalamic nucleus; PVN)の小細胞領域にはコルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing hormone; CRH)陽性の神経細胞が存在する。このCRH陽性神経細胞は正中隆起(median eminence; ME)に軸索を投射しており、神経細胞の活性化に応じてCRHを下垂体門脈系に放出する。CRHは下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone; ACTH)放出を誘導し、ACTHは副腎皮質から糖質コルチコイド放出を促す。この一連の過程をHPA系活性化と称する。

3.4 摂食行動

疾病時の食欲不振の少なくとも一部にPGE2が関与することが示唆されている[33][34]。

3.5 覚醒睡眠

PGD2が睡眠促進物質であることはPGD2の側脳室投与により示された[37]。

3.6 疼痛

腰椎くも膜下腔へのPGE2投与により熱への痛覚過敏や接触性アロディニア(触覚刺激による激痛)が誘導されることから[48]、炎症性疼痛には中枢神経系のPGE2作用も関与すると考えられている。

3.7 ドーパミン系と情動

脳内のPGE2は、疾病応答のみならず、心理ストレス下での情動制御にも関与することが示されている[53]。

3.8 シナプス可塑性と記憶学習

 

3.9 脳機能的充血

脳機能的充血とは、神経細胞の代謝亢進により細動脈が拡張されて生ずる局所的な脳血流量の増大である。PGE2は強い大脳細動脈の拡張作用を示すことから[68]、脳機能的充血におけるPGE2の関与が推測されている。

3.10 高血圧

Ang IIはSFOのCOX-1-PGE2-EP1系を介して活性酸素種を発生させ、これが交感神経系の活性化と高血圧を誘導すると考えられている。

3.11 神経細胞死

 興奮毒性による神経細胞死におけるPGの役割は数多く報告されている。

3.12 アルツハイマー病

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)は、認知機能低下、人格の変化を主とする認知症の一種である。   培養細胞を用いた実験から、EP1、EP2、EP4が特異的な作用機序を介してAD病態に関わることが示唆されている。

3.13 筋萎縮性側索硬化症

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)は運動神経系の神経細胞変性により、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、呼吸筋麻痺により死にいたる病である。

正常アストロサイトとヒトES細胞由来運動ニューロンとの培養系にPGD2を添加すると運動ニューロン数の減少が観察される。これらの結果は、変異SOD1による非自律性神経細胞死にDP1が関与する可能性を示している。

3.14 精神疾患

うつ病や統合失調症の病態にPGが関与する可能性を提示する。

脳機能におけるプロスタグランジンの役割

脳科学事典に脳機能におけるプロスタグランジンの役割が解説されている。書き出しの部分と内容をつまみ食い的に引用するが、上記タイトルを事典のHPにリンクさせてあるので詳しくは事典を開いて内容を読んでください。

呼吸器からの化学物質への被曝は肺静脈が脳に直接血液を供給することから、脳が第一の標的器官と成ることが知られている。脳は化学物質にもっとも鋭敏な臓器である。放射能も同様であろう。肺から吸入された水溶性の放射性物質や放射性気体は血流に溶け込み、酸素と共に脳細胞に接触する。水溶性の元素はイオンチャンネルを通して細胞に侵入し、溶存気体は分圧に応じて膜を透過していくことだろう。

あるいは浸透しないまでも、血球がかろうじて通り抜けられるような毛細血管の中を血液がゆっくりと通過する間に細胞を外部から被曝させるであろう。

上に述べたように、過酸化ラジカルがプロスタグランジンのような生理活性物質を誘導するのであるから、ただちに体調に異常をきたすはずである。「脳機能におけるプロスタグランジンの役割」を読まれれば、2011年3月の自らの症状に思い当たる人も多いだろう。

2013年9月19日

チェルノブイリ症候群

チェルノブイリ症候群

10月 21st, 2011 · 36 Comments

体調が悪化しているというお話を、関東でも福島でも、聞くようになりました。チェルノブイリで起こったことをもう一度、こちらに書いておきますね。

 

A:身体症状→環境中に放射性物質が拡散したことによる、外部・内部被ばくの主な症状→放射能のせいかどうか白黒つけられない!
全体的な抵抗力の低下により、様々な症状が起こってくる。個人の弱いところ、「持病が悪化」する。血液検査で対して異常がでてこないことが多い。市販の対処療法的な薬が聞かない。
放射線量の高い低いに関係性が見いだせない。


1)頭:頭痛、めまい、ぼうっとする、考えがまとまらない、ハイになる、うつになる、計算ができなくなる、多動様、二世においては少し知性に異常がでる、ノイローゼ、てんかん


2)粘膜:目、鼻、口、喉、声帯、性器関連の炎症が繰り返される。
目は子供にも白内障がのちのち増える、声帯が痛んで声がでなくなる。くりかえしおよび多発する口内炎。鼻:線量の高い低いにかかわらず、子供大人にかかわらず出る鼻血、あるいは異常な色の鼻水。歯茎からの出血。虫歯の悪化。


3)肺:咳、色のついたタンが止まらない。カラ咳。風邪と違う。あるいは繰り返す風邪。風邪が治らず気管支炎、肺炎と繰り返して入退院するようになる。喘息になる。子供は特に肺炎にかかりやすくなる。


4)胃腸:下痢あるいは軟便が長期にわたり続く。胃の上部がしまった感じで食べ物が入って行かない、食欲が無い、吐き気、嘔吐、揚げ物がむかつく、量が食べられなくなる。胃がいたくなる。
 

5)疲労感:突然襲ってくる、身体がだるいことが続く、眠くて仕方がない、立ってられない、子供の場合はゴロゴロしている。今まで感じたことのないだるさ。→原爆ぶらぶら病にとてもよく似ている


6)脱毛:徐々に抜ける場合もある
 

7)腎臓:夜中に腰の上あたり、腎臓のあたりが激痛が走るようになる。押すと少し楽になるが、ときどき起こる。腎臓炎、膀胱炎など。おねしょ。
 

8)耳:中耳炎を繰り返すようになる
 

9)皮膚:アレルギー症状の悪化、手の皮が向ける、傷が治りにくい、ヘルペス。皮膚が弱くなる。


10)心臓:大人も子供も心臓が痛くなる、病院に行って心電図をとってもらうが異常がでない。夜中に踏まれたように胸が痛くなる。血圧異常が大人にも子供にも起こる。息が切れるようになる。パタンと倒れる。老若にかかわらず突然死。
 

11)関節痛、あるいは骨の痛み、骨の異常
 

12)生理不順、出血異常。女性器に関するトラブル。乳がんなどの増加
 

13)甲状腺の異常、腫れ
 

14)リンパ節の腫れ、特に首や脇の下
 

15)その他:発熱など、神経反応の異常、ホルモンの異常、内分びつの異常、
 

16)出産の異常、分娩の異常、出生率と死亡率の逆転(汚染地域)

特定非営利活動法人チェルノブイリへのかけはしの公式サイト&ブログ

http://www.kakehashi.or.jp/?p=4475

「チェルノブイリのかけはし」に次のような身体症状がまとめられていますが、脳機能に対するオータコイドの作用と関連が深いように思われるが・・・・。