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瀬戸内海産のにがりのセシウム

2015年10月24日

 

福島事故の汚染拡大が止まるめどがたたないまま、4年半が経過した。関西における市民放射能測定所の計測でも、高濃度汚染は少ないものの放射能を検出する食品は継続的に増えてきているようにみえる。太平洋側だけでなく日本海側でも会津や郡山など福島県を経由して流出する阿賀野川河口の汚染も浮かび上がってきた。

日立などの魚市場で数μSv/hの放射線を放出する魚介類が売られているのをネットでみかけることから、和食の中心であった海の幸は終わってしまったことを痛感する。チェルノブイリ原発事故のあとに汚染したスパゲッティを食べさせるためにイタメシブームが作られたように、汚染した日本の魚介類を世界の無知な民衆に広げ食べさせるために和食が世界遺産として登録された。

魚介類がほとんど食べられなくなったので、代替ににがりを摂取してミネラルを補給している避難者たちも多いのであろう。私も瀬戸内海産の「あらなみの本にがり」を毎日2mlくらい摂っていた。だが、瀬戸内海といっても海の水は少しずつ入れ替わっていく。本当に大丈夫かと計測を試みてみた。

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機器はシンメトリックス社のiFKR-ZIPを使用。「あらなみの本にがり」は濃縮にがりなので比重が1よりも大きく、3本ほど使用すればZIPの定格320gに達する。試料室を空にして20時間計測したスペクトルをBGに、にがりを計測したスペクトルからセシウム濃度を求める。

BlBG

図 ブランクBGスペクトル(茶線)とにがり320gスペクトル(赤線)及び差分スペクトル(緑線)

   濃縮にがりでカリウム含量が多く、コンプトン散乱が高く持ち上がっているため、過剰評価されている。

 

コンプトン散乱の効果を相殺するためにカリウムを加えたBGスペクトルを作成し、試料スペクトルとの差分スペクトルを描かせる。

K8

図 炭酸カリウム8gBGスペクトル(茶線)とにがり320gスペクトル(赤線)及び差分スペクトル(緑線)

茶線がやや上に出ているような印象があり、少し低めに評価していると思われるが、差分スペクトルからカリウムのピークが消え、コンプトン散乱の効果が消えてCs137の662keV(331channel)ピークが浮かび上がってきた。

セシウム合計で2.0Bq/kgであるが、福島事故以前のCs137がメインである。

Cs134についてはまだ汚染が始まっていない海水から作られたのだと思われる。今後、どのように推移していくか、海水汚染の指標として使える製品である。

それにしても、世界中の海をこれほど汚染してしまうほど、核実験やチェルノブイリ事故の影響があったことを考えると、福島事故はもっとひどい汚染を引き起こしていくのであろう。

島根産の煎茶の汚染

2015年10月24日

西日本の食品は安全かというと、安全だと言い切れない事例として、島根県産のお茶の測定結果を報告しておこう。

製品は 島根県出雲市にある会社の販売したもので、名称 くき茶、原材料 緑茶、固形茶、調味料 原料原産国名 国産 と表示されている。

まず、「固形茶」というのがあやしい。さらに、出雲のお茶であるのにわざわざ「国産」と名告っている。出雲の名称の方が宣伝効果が大きいのに「国産」と書かれているのは他地域の“混ぜもの”があると疑わなければならない。(このように書いたところ出雲にも福島事故による汚染が広がっているのでないかという指摘をいただいた。出雲の他の産品をたくさん調べてからでないと”混ぜもの”かどうかわからないので一応ペンディング。)

これもシンメトリックス社のiFKR-ZIPで測定した。試料は100gずつZIP袋に詰めて合計200gを使用し、10時間計測を行った。

お茶はカリウムが多いためコンプトン散乱の影響を打ち消すために炭酸カリウム3gで10時間計測して作成したスペクトルをBGとして用いた。表示値Cs合計で3Bq/kg、重量補正を行って、このお茶の放射性セシウムは4.8Bq/kgであった。静岡か狭山の放射能汚染茶が混入された製品であることが明確になった。

放射能はできるだけカラダに取り入れないように防御するのが原則、特に長く生きていく子どもたちの健康を守るために親たちには最大限の配慮が必要である。

 

 

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図 出雲茶の計測スペクトル。上図はすべてのスペクトルを縦軸250カウントで表示したもの。下図は差分スペクトルのみ縦軸100カウントで表示したもの。B214、Tl208、Bi212などの天然核種のピークも見える。

天然核種の影響とカリウムの影響を消去するBGスペクトルの作成が課題である。

碧い蜻蛉

  フクシマ・ジェノサイドと呼ばれる全訳)
後世に
公害とは、公の共有物たる天地・海川に毒をまき散らし、万物の命を奪う天下の大罪