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移住支援活動を進めているアンドロメダの依頼で、高野山の土、水、野菜の放射性セシウム濃度を計測した。詳しい地名は記載するのを避けておくので、関東・東北から放射能を避けるための移住を考えている人はアンドロメダ(http://andromeda.phpapps.jp/)に直接連絡をとってください。 高野山は福島事故の影響をそれほど受けていないと思われたので、土壌試料は表土と地下40cm土壌を採取してもらった。シンチレーション式のベクレル計測器でもかなり高い精度で表面汚染を判断できるので手順をたどりながら説明しておきたい。 計測器は高槻・市民放射能計測所のシンメトリックス社のiFKR-ZIPを使わせていただいた。試料の量は320g、食品の計測の場合は10時間計測で定量限界1Bq/kgである。このレベルになると天然核種であるタリウム208、ビスマス214、ビスマス212などのピークが妨害となってくるので判断に迷う事が多い。 土の計測の場合には、これらの妨害ピークが非常に大きくなり、濃度の低い放射性セシウムのピークは飲み込まれてしまうためシンチ機では土壌計測は困難な場合が多い。 次の図は表土320gのスペクトルと地下土壌320gのスペクトルを重ねて表示したものである。赤線が地表部のスペクトル、黄緑色が地下土壌のスペクトルである。296channelのところのピークがタリウム208(593kev)、右側の大きなピーク730channel付近はカリウム40のピークである。 |
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タリウム208 |
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カリウム40 |
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地下土壌の方がスペクトルの位置が高いので、天然核種の放射能レベルが高いことを示している。いくつかある山は地表も地下も同じ位置にあるので地表部の凹凸も天然核種に由来するものであることがわかる。目に見えるセシウムのピーク(302、331、398channel)はピークがなさそうに見える。これからバックグランドスペクトルとして用いる地下土壌の適正量を割り出していく。 地下土壌 K40カウント数 274cts Tl208カウント数 383cts 地表土壌 K40カウント数 216cts Tl208カウント数 302cts 216/274=0.791 302/383=0.788 地下土壌 320×0.75 = 240gを計測してスペクトルを描かせる。 |
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地下土壌240g を計測したスペクトルをバックグランドにして地表部の汚染を計測したのが上図である。これでも地下土壌のスペクトルの方が地表のスペクトルよりも上に行っているので、地下土壌をもっと減らさなければいけない。 地下土壌 K40カウント数 239cts 地表土壌 K40カウント数 216cts 216/239=0.90 240×0.9=216g 地下土壌を210gにして計測してスペクトルを描かせる。 |
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高野山の土 セシウム合算 不検出 計測器 iFKR-ZIP A 試料 高野山近くの畑 表土 320g BGスペクトル 同所地下土壌 210g 計測時間 36000秒 地下土壌210gのスペクトルと地表土壌320gの天然核種のスペクトルがほぼ重なり、地表部の汚染を浮かび上がらせる。ベクレル計算を行うとセシウム合算では不検出、セシウム137を0.8Bq/kgカウントしている。しかし、ピーク位置である331channel(662keV)にはピークが無く、315channel(630keV)付近のピークのカウントによる誤検出だと判断した。セシウム134のピーク位置である398channelにも3カウントしかないのでここも不検出と判断した。
少ない経験であるが、地表土壌と地下土壌のスペクトルの測定による計測においては水田などの堆積土と山畑などの基盤岩盤が風化されて土壌が形成されているところでは大きな違いが有る。 水田などのように外部からの土壌が堆積して厚い層を作っている場所では上も下も天然核種によるバックグランドスペクトルの強度は同じレベルであり、表土と同じ量の土壌を用いたスペクトルをそのままバックグランドスペクトルとして用いることができるようだ。 これに対して、山間部の基盤岩盤が風化し、その上に落ち葉や枯れ草などを腐植させて形成された畑や林間部では、表土より地下土壌の天然核種の濃度が高くなっていて、バックグランドスペクトル測定に用いる土壌の量を減らしていかないと行けない場合が多い。岩盤の中に含まれている天然核種は同じだったはずであるので、長い年月の間に雨水に洗われて流亡したか、地下に浸透していったかのいずれかで表土の天然核種の濃度が低くなっている。そうした場所でも土壌の量を調整することで、表土の人為的汚染を浮かび上がらせることができる。10時間計測で1ベクレル/kgの検出限界というシンチレーション計測器での適用範囲を大きく広げているように思われる。 また、ウラン系列、トリウム系列の核種のピークが見られるが、畑に使用されたヨウリンなどの肥料に含まれる天然核種が積み上がっているようである。 |
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高野山の水 セシウム合算 不検出 計測器 iFKR-ZIP A 試料 高野山近くの沢水 320g BGスペクトル 高槻・市民放射能測定所ブランク20時間 計測時間 36000秒 セシウム137、134に相当する位置にピークはなく、数値も定量限界(1ベクレル/kg)を大きく下回って不検出と判断しました。 |
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高野山の白菜 セシウム合算 不検出 計測器 iFKR-ZIP A 試料 高野山近くの白菜 320g BGスペクトル 高槻・市民放射能測定所ブランク20時間 計測時間 36000秒 セシウム137、134に相当する位置にピークはなく、数値も定量限界(1ベクレル/kg)を大きく下回って不検出と判断しました。 試料は細かく裁断し、揉み込んでからZIP袋2袋に充填して計測に使用した。 |
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高野山の大根 セシウム合算 不検出 計測器 iFKR-ZIP A 試料 高野山近くの大根 320g BGスペクトル 高槻・市民放射能測定所ブランク20時間 計測時間 36000秒 セシウム137、134に相当する位置にピークはなく、数値も定量限界(1ベクレル/kg)を大きく下回って不検出と判断しました。 試料は細かく裁断し、揉み込んでからZIP袋2袋に充填して計測に使用した。 |
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碧い蜻蛉
高野山の土、水、野菜