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柏/松戸のアルファ線核種汚染 |
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原発事故が起きてから、政府が一貫して行って来たことは、汚染の実態を明らかにしないことであったと思う。石原環境大臣は野党時代に「市民に放射能を測らせるな」と発言したように、汚染の事実を隠蔽し、被害の実態を矮小化することに為政者たちは懸命である。原発が稼働中に爆発すると数千種類の核物質が吹き出ると言われている。数秒から数分、数時間で元素転換して他の元素に変換したり、放射能を失ったりする核種が大半である。これらの短寿命核種は短い時間のあいだにエネルギーを大量に放出し動植物を被曝させて、姿を隠してしまうので、事故直後にできるだけ迅速な飛散核種調査を行うことは、「国民の命を預かる」国として当然なすべき事であり、税金で禄を食んでいる科学者としての常識であるはずであった。 原子炉から放出された核燃料や核分裂や核反応によって生成した膨大な放射能の存在を空間線量という放射線レベル(それもガンマ線のみ)に矮小化し、「シーベルト」という科学的根拠の怪しい数値を金科玉条にふりかざすことによって、安全神話という風評を広げてきた。 ウランやプルトニウムなどのアルファ線を放出する粒子は、肺組織や呼吸器組織に吸着すると、数μメータの狭い範囲に集中してダメージを与え、組織の脱落や癌化を促進する。寿命の長い放射線微粒子は放射能を失うことなく脱落した組織と共に血流に乗ったり、リンパ液の流れに乗ったりして新しい攻撃対象を見つけるかも知れない。ナノ粒子レベルであると脳関門を突破して中枢神経を攻撃するかも知れない。 柏/松戸の土壌サンプルの一部を取りだして、パンケーキ型ガイガー計数管KH-LND7317(シーディクリエーション製)でアルファ線強度の計測を行った。 |
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ガイガー管の開口部。保護用の金網が張られ、その裏側に雲母でできた蓋がある。網の様子から見るとアルファ線の半分程度は金網で捕捉されると思われることと、器具の下端から開口部まで4mm程度空間があるので空気による減衰も考慮しなければならない。 |
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KH-LND7317の試料に向ける面。外側のアクリルケースはガンマ線の計測時に使用。ケースから取りだしてアルファ線、ベータ線の計測を行う。アルファ線は紙1枚で遮られるので紙の有る無しの差からアルファ線のカウントを出す。 |
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最大で20万ベクレル/kgのセシウム汚染を起こしている試料であるので扱いに慎重になる。(でも、こんなにひどい汚染の上に生活させている現実に暗澹たる気持ちになってしまう。) まず、新聞紙大のプラスチックシートを起き、A3サイズの広告チラシを広げ、中央に薬包紙を置く。試料袋からステンレススプーンで土壌サンプルを取り出して、薬包紙の上に広げていく。厚さ3ミリくらい、直径はKH-LND7317の開口径より大きく、7センチくらいの台形状に土を盛り上げる。 その上に、もう一枚薬包紙を起き、アクリルケースに入れたままのKH-LND7317を置いて、ガンマ線の計測数をカウントする。次に、計測器の位置がずれないように気をつけながら、紙の上に機器を直接置いて再度カウントする。これはベータ線とガンマ線のカウント数を計測していることになる。最後は、機器を一旦取り外して、土の山の外側に割りばし(厚さ5ミリ)を2本平行に置く。機器の位置を前の計測と同じようになるように割りばしの上に置き、アルファ線、ベータ線、ガンマ線による合計カウント数を測定する。ベータ線、アルファ線の計測単位はcpm(1分間に何回放射線がガイガー管に飛び込んだか)である。 柏/松戸の土壌試料の内、ベータ線が比較的高かった12試料について計測した。 表は、測定を行った試料の土壌セシウム濃度(合計)と、事故の起きた直後2011年4月1日時点に換算したセシウム濃度(合計)、KH-LND7317の計測値とベータ線、アルファ線の寄与カウント数である。 全試料でアルファ線によるカウントが見られた。なかでも、17−6の明原町と西町4丁目との間の路上の土、254機での再測定で約22万ベクレル/kgのセシウム汚染がみられた土壌で145cpmという値を検出した。 |
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関西で行って来たフィールド調査でアルファ線を検出することはない。値を見ているとセシウムの濃度との関連性が見られることからセシウム濃度(現在と2011年換算値)とアルファ線カウント数との関係をプロットしてみた。R2値 0.91と非常によい相関性がみられた。このことは、アルファ線核種とセシウム沈着とが同時に起きていたことを示唆する。つまり、ウラン、プルトニウムとセシウムが同時に飛来していたことになる。 一方、先の報告でも書いたようにセシウム濃度とベータ線との相関性が高くないように、ベータ線とアルファ線との相関性も高くなっていない。ストロンチウムなどのベータ線核種は別途に飛来したことを想像させる。 |
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アルファ線核種による土壌表面汚染 |
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碧い蜻蛉
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040501/02.gif
アルファ線核種による汚染のもっともひどい17−6の145cpmという数値はどのような意味の数値なのだろうか。「管理区域における表面汚染密度の管理基準の例」によれば、アルファ線を出す放射性物質 0.04Bq/cm2以上は放射線区域となる。0.4Bq/cm2以上が汚染区域に分類される。
145cpmを毎秒当たりのcpsに直し、KH-LND7317の開口面積で割ってやると 0.15cps/cm2となる。アルファ線放出は1崩壊ごとに1粒子放出されるから、これはそのまま0.15ベクレル/cm2とみなすことができる。
つまり、放射線管理区域以上、放射線汚染区域レベル以下ということになる。ガンマ線だけでなく、アルファ線でも放射線管理区域の汚染を起こしていることがわかる。
KH-LND7317の開口部に金網がセットされていることから捕集効率が落ちているにもかかわらず高いレベルの汚染を起こしていることが確認できる。
また、グラフの勾配から常総地域においては土壌のセシウム濃度(合計)がわかれば、次式でアルファ線表面汚染を推定できる。
アルファ線表面汚染(Bq/cm2) = セシウム濃度 × 0.0006 × (0.1502 ÷ 145)
= セシウム濃度 × 6.21 × 10−7
(時間が立つとセシウムが減衰するので2011年4月1日相当に換算して計算する方が良い。その際は0.0004を用いて下さい。
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