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ベータ線核種の計測が必要

八重洲/柏/松戸の調査から

土壌セシウム濃度も地表の線量率と一致しない

セシウムカウント数が少なくても高い所がある

土壌セシウム濃度とベータ線強度もばらつくが

ある程度は相関する関係にあるようだ

碧い蜻蛉

  フクシマ・ジェノサイドと呼ばれる全訳)
公害とは、公の共有物たる天地・海川に毒をまき散らし、万物の命を奪う天下の大罪

 

千葉県柏市、松戸市で現在の汚染状況はどのようになっているかを自ら確認するために、3泊4日の踏破調査を行った。行動半径が限られているのでごくちいさなエリアでのしかも、行きずりであるために全体像をつかむものにはならないが、除染作業が終了した町の現況を推測する一つのデータとはなるであろう。

調査機器は、オンサイトでガンマ線スペクトルの計測できるシンメトリックス社のガンマ線サーベイメーターiFKR-254、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の計測できるパンケーキ型ガイガー管を備えたシーディークリエーション社のKH-LND7317、エコテスト社のTERRA(MKS-05)を持参した。

調査地域は別の会議の関係で東京駅八重洲口近傍、JR柏駅周辺、筑波エクスプレス柏の葉キャンパス駅周辺、武蔵野線新松戸駅周辺など約40地点で行った。

今回の調査は地点を多く回りたかったため、地上1mの計測は行わず、地表部にビニールを広げガンマ線、ベータ線の計測ならびにガンマ線核種のサーベイ(1000秒)を行った。土壌試料の採取も行ったので今後土壌濃度とオンサイト計測の関連性を明らかにし、地図などでアップしていく。

 

ガンマ線線量率とオンサイトセシウム137カウント数との関係

図はiFKR-254でのガンマ線線量率(1分間隔、10回計測平均)と1000秒間でのCs137のカウント数との関係をあらわしたものである。iFKRはCsI結晶を備えたシンチレーションサーベイメーターであるのでガンマ線は正確に捉えられる。そのエネルギーレベルをマルチチャンネルアナライザーで振り分けて核種判別のできるスペクトルを描かせる。このことは他のページでもなんども説明してきた。セシウム137のカウント数と地表のガンマ線線量率がぴったりと比例する結果となった。

シンチレーションカウンターなどで地表部のガンマ線線量率を計測すれば、土壌のセシウム濃度を推測できることになりそうだ。

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● セシウムカウント数とベータ線濃度

KH-LND7317は4.5cmΦのパンケーキ型ガイガー管を備えた計測器で外側に3mm厚さのアクリル板ケースつけてガンマ線計測、ケースから出してベータ線、アルファ線の計測を行う。計測は開口部を地表に向け、ビニール袋の上で行った。この機器は4分で計測値が安定するのでアクリル装着時と外した時のカウント差から地表のベータ線濃度を計算で求める。ほとんどの地点でアルファ線計測は行わなかった。

求めたベータ線濃度とCs137 のカウント数の関係は次のグラフのように、Cs137濃度とベータ線濃度の間に関連性がないことわかった。Csのカウント数が低いのにベータ線が高くなっている地点もあり、ベータ線核種の挙動はガンマ線核種の挙動と大きく異なっていることわかった。

ベータ線核種として懸念されているのがストロンチウムであるが、セシウムプルームとは別のプルームとして飛来して現在の結果となっているのか、同時に飛来したが飛来後の土壌条件などで溶脱の差が出ているのかなどはわからない。

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● ガンマ線線量率とベータ線カウント数

縦軸をKH-LND7317で計測したベータ線カウント数、横軸をiFKR-254でのガンマ線線量率の関係である。Cs137とガンマ線線量率がきれいに比例することからこのグラフも当然ばらついた相関性の無いグラフとなる、

ガンマ線線量率とベータ線核種との汚染との間には全く関連性がないことになる。ストロンチウムを測らない理由にセシウム汚染がストロンチウム汚染を判断する目安となるからだといわれてきた。

しかし、ベータ線汚染とセシウム汚染は全く関連性が無く、セシウム計測はベータ線核種であるストロンチウム濃度の指標には使えないことがわかる。

ストロンチウムは体内に入れば外部からは検出不可、骨に蓄積して骨髄細胞を攻撃して白血病などを引き起こすことが心配されるので、環境中のベータ線核種もセシウムとともに調べる必要があるだろう。

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ガンマ線測定はベータ線測定の代わりにならない!

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近似直線

● セシウムカウント数と土壌セシウム濃度

地表部の線量率、セシウムカウント数、ベータ線強度などを求めた後で、少量の土壌を採取して持ち帰り、高槻・市民放射能測定所の好意で無料測定をさせてもらった。縦軸が土壌中のセシウム137の濃度、横軸がiFKR-254で計測した地表のセシウム137カウント数。

カウント数とガンマ線線量率はきれいな直線にのることから、こちらもある程度直線性が見られるかと予想していたが、大きく逸脱する測定点があることがわかった。黒い直線は全体の近似曲線、青い直線は大きく逸脱しているものを除いて近似直線を描いてみたもの。青い線に沿った近傍の地点は254のカウント数から土壌濃度がある程度推測できる。しかし、土壌濃度18万ベクレル/kgの地点など予測より遙かに高濃度であった。

セシウムカウント数と線量率は直線性があることから、地表の線量率は必ずしも土壌濃度と比例関係にあるとは言えないことになる。線量率が同じ1μSv/hであっても、その場の土壌濃度は計測してみないとわからないのである。

まして、地上1mの線量率で安心だと油断をしていると、足下の土には数万ベクレル/kgの放射性セシウムが含まれていることがあるかもしれない。

土壌濃度をきちんと測ることが必要であることが確認できた。

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● ベータ線強度と土壌セシウム濃度

パンケーキ型ガイガー管を備えたKH-LND7317を薄いビニールを敷いた地表に置いて、はじめは3mmのアクリルケースに入れたままベータ線を遮断してCPMを求め、位置を変えないように注意しながらケースを外し、ベータ線とガンマ線を合わせたCPMを求める。遮蔽を外した後に増えた分がベータ線による寄与である。これを換算してベータ線強度を算出する。

ベータ線核種による汚染と放射性セシウムの汚染との間に、ばらつきは大きいものの、ある程度の相関性が見られる。セシウム汚染の高い所はベータ線核種による汚染も高い傾向にある。

しかし、大きく逸脱する地点があることからここでも両者の汚染過程にずれがあったことが推定できる。

セシウムとストロンチウムなどでは沸騰する温度が異なることから、比較的低温で沸騰するセシウムを放出した爆発と、ストロンチウムなどより高温で沸騰する核種を放出したより温度上昇の激しい爆発があったことが汚染の現状の中から見ることができる。